Golden afternoon143周年記念『不思議の国とアリス〜うそだ予告編〜』
脚本:赤羽健太郎
○テムズ川を下る船の上
カメラ目線で覗き込む3人の少女のアップ。
- ドジソンの声
- 「むっつの瞳が僕を凝視している。これから始まるお話への最大限の期待を込めて、僕の唇が動き出すのをじっと待っている。僕がその期待にこたえられなければ、彼女たちの眼差しはただちに非難の色へと変わるだろう。例えば長女のロリーナが、」
- ロリーナ
- 「なにしてるのよ、さっさとはじめなさいよ」
- ドジソンの声
- 「と命令すれば、今度は次女のアリスが、」
- アリス
- 「おもしろいのじゃなきゃいやーよ」
- ドジソンの声
- 「と要求し、しまいには三女のイーディスまでもが、」
- イーディス
- 「即興でお話のひとつも作れないようじゃ、作家としてプロ失格ね」
- ドジソンの声
- 「などと釘を刺すに違いない。が……どんな作家にもスランプというものはあるものだ。そんな私の焦燥をよそに、夏の日差しは容赦なく照りつけ、テムズ川の水面は眩い日の光を受けてキラキラ輝き……」
3人の少女の背後にテムズ川の流れが見える。
- ドジソンの声
- 「――と言いたいところだが、ロンドン気象台の記録によれば1862年7月4日のオックスフォードの天気は『肌寒く雨模様、降雨量4.3ミリ』とあり、」
3人の少女の背後に曇り空が見える。
- ドジソンの声
- 「さっさとお話を済ませてしまわなければ恐らく雨が降ってきてピクニックは中止になるだろう……と考えるとますます気は焦る。……ん、待てよ?雨が降るからさっさとお話を済ませてしまわねばならないとしたら……そうだ、この手があった」
○『不思議の国とアリス』予告編
・シーン6
気狂いお茶会。
- 帽子屋
- 「カラスと机が似てるのは、なーんだ?」
・シーン7
アリスとウサギの追いかけっこ
・シーン3
アリスとイモムシの会話。
- アリス
- 「もっと、もっと、もーっと、大きくなりたいんです」
・シーン9
町を踏み潰す巨大なアリスの足。
非難する人々。
絶叫するアナウンサー。
・番外
おじぎをするアリス。
- アリス
- 「ヒトシさん、ヒロイさん、あけまして、」
・シーン3
カエルとサカナの会話
- サカナ
- 「まめもも」
- カエル
- 「まめもも?」
- サカナ
- 「まめもも」
・シーン8
絶叫する女王。
- 女王
- 「その者の首をはねよ!」
アリスに襲い掛かるトランプたち。
・シーン1
穴に落ちるアリス。
その手を掴むドジソン。
ドジソンの台詞。
ドジソン手を離す。
○テムズ川を下る船の上
カメラ目線で覗き込む3人の少女のアップ。
- ドジソンの声
- 「むっつの瞳が相変わらず僕を凝視している。これから始まるお話への最大限の期待を込めて、僕の唇が動き出すのをじっと待っている。僕がその期待にこたえられなければ、彼女たちの眼差しはただちに非難の色へと変わるだろう」
3人の少女の背後にテムズ川の流れが見える。
- ドジソンの声
- 「夏の日差しは容赦なく照りつけ、テムズ川の水面は眩い日の光を受けてキラキラ輝いている。天気予報は外れた。雨が降るであろうことを口実に、予告編で誤魔化そうという僕の目論みは見事に打ち砕かれたわけだ。人生はなかなか思い通りには行かない。だからこそこの世はワンダーランドだ」
間。
ドジソン口を開く。
- ドジソン
- 「むかしむかし、アリスという少女がいました」
3人の少女が笑顔に変わる。
○黒味にテロップ
そうまあきら監督『不思議の国とアリス』2006年3月発売
- アリスの声
- 「ノンセンスを入れてね。」
<END>